愛犬よりも飼い主の余命が短い場合は、犬の後見人を決めておかなくてはなりません。
犬を育てるためには経費もかかります。
飼い主が健在であれば、愛犬の後見人に謝礼金を渡すのは簡単です。
飼い主の死後のこと(遺産の一部を渡す) となると、法的な手続が必要になります。
ここでは、遺された愛犬を養育してもらうための法的手続について簡単に紹介します。
犬の後見人の探し方
身近な人(家族・親類・友人) に託せない場合は、動物病院やペットショップに相談してみましょう。
犬に関するSNS を活用して情報源を広げるのもよいでしょう。
動物保護を目的とした団体、研究機関に託すことも考えてみてください。
負担付遺贈を利用する方法
犬に直接遺産を遺すことはできませんが、「形式上負担付遺贈(民法第1002 条)」や「負担付死因贈与(民法第551 条・第553 条)」を利用すると、犬の後見人に財産を遺すことができます。
1. 愛犬の後見人(受贈者) を決めます。
個人だけでなく、動物愛護団体を指名することもできます。
2. 「愛犬が天寿を全うするまで面倒をみることを条件に、指定した犬の後見人(受贈者)に財産を贈与する」という趣旨の遺言を残します。
※ 受贈者の合意がなければ、成立しません。
※ 飼い主よりも先に愛犬が死んでいた場合は、無効になります。
3. 「遺言執行者」(民法1006 条) を指名します。
4. 飼い主の死後、犬の後見人が愛犬を適切に飼育しているかどうか(お金だけ受け取って放置していないかどうか) を遺言執行者にチェックしてもらいます。
5. 愛犬を適切に飼育していない場合は、2 の「受贈者(犬の後見人)」への財産贈与が撤回されます。
信託制度を利用する方法
遺産が多い場合は、信託法で定められた「信託制度」を利用した方がよいかもしれません。
1. 受託者(信託銀行など) に財産を預け、「遺された愛犬のために財産を管理・運用・処分してもらう」ための契約を結びます(または公正証書遺言を遺します)。
2. 受益者(飼い主の死後に愛犬を飼育する人) を指名しておきます。
個人だけでなく、動物愛護団体を指名することもできます。
3. 信託監督人(飼い主の死後に愛犬の飼育が適切に行われているどうかをチェックする人) を指名しておきます。
4. 飼い主の死後、「受益者」には愛犬の飼育に必要な経費と報酬が「受託者」から交付されます。
5. 愛犬の死後に余った財産は、「受益者」または法定相続人の取り分となります。 2 のように飼い主が受益者を指名せず、「愛犬の飼育のために信託財産を使う」という目的だけ定める方法もあります(目的信託)。
目的信託の場合、世話をする人や団体の選択が信託管理人に任せられます。
愛犬の死後に余った財産は、信託の目的に沿った使い道で処分されます。
詳しくは法律の専門家(弁護士など) に相談してください。
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