定年前に知っておきたい退職金にかかる税金について語ります。
非情にも退職金にも税金がかかってきます。
そう言われると、サラリーマン・OLは、驚きと怒りの感情が湧き起こると思います。
まず驚きのほうですが、これまで会社側で税金を計算してくれたので、ほとんど税金の意識なしに、銀行口座に振り込まれるままに給与・賞与を受け取ってきた方が多いと思います。
一方は、虎の子の退職金にまで税金をかける国への怒りです。
老後の死活問題にかかわる退職金に税金をかけてくるなんて怒り心頭です。
まあ、国の制度なので、ここは冷静になりましょう。
それでは、定年前に知っておくべき退職金にかかる税金の算出方法について解説します。
個人個人の事情がありますので、あなたにとって当てはまるもの、当てはまらないものもでてきますが、参考になるように分かりやすさを前提にまとめましたので、ご参考にしてください。
目次
退職金の種類:まずは退職金の種類は何?
計算を始める前に、何が退職金なのかを知る必要があります。
まず、認識すべきことは、
退職金は、法律で定められた制度ではなく、会社ごとに規則が定められている制度です。
所属する会社によって、規則が当然違いますし、個々人の状況(中途なのか、転職なのか)でも違ってきます。
私テリー(一般会社員)をモデルケースとしてご参考にしていただければと思います。
それでは退職金の種類です。
会社からいただくお金であり、国からいただく年金(老齢厚生年金+老齢基礎年金)は除きます。
下記は退職金の種類ですが、こちらはひとつの例です。
(1)退職一時金
(2)確定拠出年金
(3)企業年金
上記の場合、退職金(退職金額)は、(1)+(2)+(3)の合計金額になります。
退職金額:退職金の合計金額はいくら?
(1)退職一時金は、会社から提示される金額そのものです。
次に、(2)確定拠出年金や(3)企業年金の金額は、一時金でもらうか、年金(5年や10年など)でもらうかで、変わってきます。
退職金の金額は、年金の方ではなく、一時金の方を退職金の金額とします。
ここで判断しなくてはならないことがあります。
「いつからもらうのか?」
「一時金でもらうのか、年金でもらうのか?」
です。
これにより、退職金の金額が違ってきます。
独身なのか既婚なのか、資産はいくらなのか、家族構成、これまでの収入と支出の傾向、、、いろいろな要素を考えて判断しなくてはなりません。
一生を左右するものですから、家族とも協議の上、判断しましょう。
簡単に言うしかないのですが、数ヶ月以上かけて判断すべき重要課題ですね。
(1)退職一時金
(2)確定拠出年金
(3)企業年金
それぞれの金額が出てきたでしょうか。
退職所得控除額
退職所得控除額とは、その名の通り、退職所得金のうち控除される金額ですね。
勤続年数をAとします。
・勤続年数20年以下:40万円 X A(勤続年数)
(80万円に満たない場合には、80万円)
・勤続年数20年超 :800万円 + 70万円 X (A – 20年)
「モデルAさん」勤続年数が20年の場合は、800万円となります。
「モデルBさん」勤続年数が40年の場合は、2200万円となります。
この金額が、退職所得金から控除されるわけですね。
多ければ多いほど嬉しいといえます。
下記の国税庁のホームページに掲載されています。
課税退職所得金額
課税退職所得金額とは、所得税と住民税を計算する際に元になる金額を言います。
要するに、課税される対象となる金額ですね。
退職金額と退職所得控除額が分かりましたので、次の計算式で、課税退職所得金額が算出されます。
(退職金額 – 退職所得控除額)x1/2 = 課税退職所得金額(B)
課税退職所得金額を(B)とします。
こちらは、少なければ少ないほど嬉しいといえます。
税金には所得税と住民税があります
いよいよ税金です。
税金には(1)所得税と(2)住民税がかかります。
(1)所得税
課税退職所得金額(B)に税率をかけ、控除額を引きます。
所得税=課税退職所得金額(B) X 税率 – 控除額
課税退職所得金額(B) | 税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
こちらも国税庁のホームページに公示掲載されています。
平成29年分所得税の税額表
(2)住民税
住民税=課税退職所得金額(B) X 10%(一定率) X 9/10
計算例
■「モデルAさん」勤続年数が20年、退職金1000万円の場合
退職所得控除額 40万円 X 20=800万円
課税退職所得金額 (1000 – 800)x1/2 =100万円
所得税 100 X 5% – 0=5万円
住民税 100 X 10%(一定率) X 9/10=9万円
税合計額=5+9=14万円
■「モデルBさん」勤続年数が40年、退職金2000万円の場合
退職所得控除額 800万円+70万円 X (40 – 20年)=2200万円
課税退職所得金額 (2000 – 2200)x1/2 = – 100万円
マイナスとなりますので所得税も住民税もかかりません。
■「モデルCさん」勤続年数が40年、退職金3000万円の場合
退職所得控除額 800万円+70万円 X (40 – 20年)=2200万円
課税退職所得金額 (3000 – 2200)x1/2 =400万円
所得税 400 X 20% – 42.75=37.25万円
住民税 400 X 10%(一定率) X 9/10=36万円
税合計額=37.25+36=73.25万円
退職金にかかる税金、どうすればお得なのか?
当然ながら、退職金の非課税枠を最大限に使って、税金をゼロにしたいですよね。
退職所得控除額のところで出てきた次の式
(退職金額 – 退職所得控除額)x1/2 = 課税退職所得金額(B)
課税退職所得金額(B)をミニマムにすればよいです。
しかし、先に述べましたとおり、ご自身のライフスタイルによって、
「いつからもらうのか?」
「一時金でもらうのか、年金でもらうのか?」
で、金額が違ってきます。
ここは、何ヶ月もかけて、御自身のライフスタイルを考えながら、じっくりシミュレーションをして最終判断をしましょう。
まとめ:実は退職金にかかる税金は優遇されているという事実
以上は、あくまで私(一般会社員)をモデルケースとして、分かりやすさを前提に解説してきました。(一部私の場合と異なります)
先に述べましたように、個々人により条件は違いますので、会社の制度や総務に確認するなりして、自身の実態を把握しましょう。
個人によって、退職金の種類、金額、家庭の状況などが異なりますので、ひとことで退職金にかかる税金はいくらかといっても、非常に複雑なプロセスと吟味すべき長い時間を要します。
定年が近い方はやらなくてはならない必須課題ですね。
まだまだ定年が先の方でも、だいたいの金額をシミュレーションするのは、将来を見据える上でも大いに有益だと思います。
冒頭で、非情にも虎の子の退職金にも国は税金をかけると述べました。
実は、長年の勤労を尊重し税制面では優遇されているのです。
課税退職所得金額のところで出た、1/2 という数値です。
(退職金額 – 退職所得控除額)x1/2 = 課税退職所得金額
これで単純に課税額が通常の半分(1/2)になるという仕掛けです。
もうお分かりのように、退職金にかかる税金は税制面では優遇されているのです。
税金を納めるのは国民の義務、制度は制度、ここは税金という側面から、自身の財務状況を冷静に見つめ直しましょう。
ご参考にしていただければと思います。